男性と女性の役割

男性と女性の役割

Man and Woman Roles Instruction, encouragement, and guidance regarding God’s unchanging truths as presented in “Scriptural Principles of Man and Woman Roles”
October 2024 WELS

【和訳】Japanese PDF

男性と女性の役割『男性と女性の役割に関する聖書的原則』に基づく神の変わらない真理についての教え、励まし、導き 2024年10月 WELSより

 エペソ人への手紙5章では、聖霊が男性と女性の役割に関する教えを、美しい福音の励ましと共に示しています。また、コロサイ人への手紙3章では、その男性と女性のデザインに基づき、聖霊が夫婦への具体的な指示を示しています(コロサイ3:18-19)。しかし、これらの教えの前には、以下のような温かい励ましが与えられています。

それゆえ、神に選ばれた者、聖なる、愛されている者として、あなたがたは深い同情心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。互いに忍び合い、だれかがほかの人に不満を抱くことがあっても、互いに赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたもそうしなさい。そして、これらすべての上に、愛を着けなさい。愛は結びの帯として完全なものです。

 キリストの平和が、あなたがたの心を支配するようにしなさい。そのためにこそあなたがたも召されて一体となったのです。また、感謝の心を持つ人になりなさい。キリストのことばを、あなたがたのうちに豊かに住まわせ、知恵を尽くして互いに教え、互いに戒め、詩と賛美と霊の歌とにより、感謝にあふれて心から神に向かって歌いなさい。あなたがたのすることは、ことばによると行いによるとを問わず、すべて主イエスの名によってなし、主によって父なる神に感謝しなさい。(コロサイ3:12-17)

私たちは、主の愛を見習いながら、神が定められた男性と女性の役割を語り、実践する際に、憐れみ、柔和、一致、平和を目指します。そして、すべての事柄において聖霊の教えに従って生きることを求めます。「あなたがたの寛容な心を、すべての人に知らせなさい。主は近いのです。」(ピリピ4:5)。

1993年、私たちの教会は長年の聖書研究を経て、「男性と女性の役割に関する聖書的原則」という教義声明を採択しました。この声明は、時代を超えた神の真理を、現代の必要に応じて告白したものです。現在の課題に応えるため、この牧会的手紙を通して、男性と女性の役割に関する神の意図を教え、励まし、導きます。

手紙全体を通じて、Embrace Sections(抱擁のセクション)では、神がデザインされた男性性と女性性の具体的な側面をより深く受け入れることを励ます内容が提示されています。
手紙を読む(英文)

男性と女性の役割に関する聖書的原則

聖書的原則の導入

1960年代から1970年代にかけて、アメリカ社会では男性と女性の役割に関する態度や実践に大きな変化が見られました。この変化は教会内にも疑問をもたらし、教会の実践についての検討を促しました。このような背景の中で、教区学校での実践を聖書に基づいて慎重に評価することを奨励するため、1978年4月に高等教育委員会は「聖書に基づく男性と女性の役割」と題する論題を採択しました。この論題とその解説は、会長会議(COP)の承認を得て、1979年のWELS(ウィスコンシン福音ルーテル教会)大会に提出され、教区内での研究が奨励されました。

その後のフィードバックを受け、1981年の大会では、COPに対してこの主題に関するパンフレットの作成を指示しました。教区ごとに1名ずつ選ばれた10名の牧師による委員会が編成され、このパンフレット『神の世界における男性と女性』が1985年にCOPの承認を得て発行されました。1987年には、より詳細な解釈を提供するための『神の世界における男性と女性―拡張版の研究』も発表されました。

これら3つの研究は、創造の時点ですでに神が男性と女性の地上での役割の違いを確立されており、これらの役割が現在も適用可能であることを結論付けました。しかし、教会内ではこの「創造の秩序」が本当に聖書に基づいているのか疑問を投げかける声もありました。

1989年の大会では、『神の世界における男性と女性』を教会の公式教義声明として採択するべきだという意見書と、聖書そのものが教義として十分であるため公式声明として採択しないようにという反対意見書が提出されました。結果として、大会はこのパンフレットを聖書の教えを正確に解釈したものとして受け入れる一方、1991年の大会で簡潔な公式教義声明を準備するようCOPに要請しました。

この要請に応じ、COPは5名の牧師による委員会を任命し、声明の作成を進めました。この声明の初稿はノースウェスタン・ルーテル誌に掲載され、意見を募集しました。その後、改訂版『男性と女性の役割に関する聖書的原則』が提出され、大会で承認されました。さらに教区メンバーからの表現改善の提案を受け付け、聖書に基づく研究教材の準備も求められました。

最終的に、改訂版の声明は1993年の大会で採択され、「簡潔で前向きなトーンの実用的声明」が求められました。この要請に応じ、ジョン・ブルグ教授による『神の世界における男性と女性に関する聖書研究』が1992年に、ウォルター・ベックマン牧師による『聖書的役割を適用する際の霊的姿勢』が1994年に発表されました。

今回の声明は、3つの異なる研究グループによる10年以上にわたる研究の成果に基づいています。その教義的結論は、3回連続する教会大会で承認されました。声明は包括的な説明を目的としたものではなく、当時の論争点に基づき具体的な問題を簡潔かつ肯定的・否定的な観点から扱ったものです。

声明は、男性と女性がキリストにおいて共有する霊的平等と、神が地上でそれぞれに割り当てた役割の違いの両方を強調し、創造の時点で確立されたこれらの原則が現在も有効であることを明確に示しています。

男性と女性の役割に関する聖書的原則

聖書が男性と女性について教えている教義と実践における一致を表すために、私たちは以下の声明を告白として提示します。

創造

1.  神はご自身のかたちに人(男性と女性)を創造されました。この神のかたちは、創造主との関係において男性と女性に霊的平等を与えました(創世記1:26,27; コロサイ3:10; ガラテヤ3:28)。

2.  神は愛をもって、男性と女性にそれぞれ異なる責任を定められました(創世記2:7,18,22)。神は霊的平等を与えた上で、男性にはリーダーシップを、女性には従順を求めました。これらの役割は、男性と女性が互いに補完し合う関係を示す神の変わらない意志を表しています。このことは新約聖書の以下の2つの箇所に記されています(1コリント11:3,8,9; 1テモテ2:12,13)。

3.  神は創造の計画において、男性と女性の役割を定められました。それは、彼らを結婚によって結び合わせる前、また彼らが罪を犯す前に行われたことです(創世記2:7,18,22; 1コリント11:3,8,9)。したがって、神が定められた役割は、結婚関係を超え、歴史のすべての時代に適用されます。

堕落

4.神のすべての命令と神が定められたすべての役割は、私たちの益のためのものです(1ヨハネ5:3; 詩篇19:8,11)。これを無視したり拒んだりすることは、神や互いとの関係を損ないます(1ペテロ3:7; エペソ6:3; ローマ13:2-4)。

5.人間が罪を犯したとき、男性と女性は神のかたちを失い、創造主との完全な関係も失いました(創世記5:1-3; イザヤ59:2)。また、男性と女性は互いに聖なる調和のとれた関係も失いました(創世記2:16,17; 3:12,16)。

回復

6.神はすべての人間を非常に愛されたため、の神の御子を送り、犠牲にすることで、かつて彼らが持っていた神との聖なる関係を再構築されました――これが義認です(ローマ5:8; 2コリント5:18,19,21; エペソ4:24; コロサイ3:10)。

7.男性も女性も、イエスへの信仰を通して神によって信仰に導かれるとき、神との再構築された関係において平等な地位を享受します(ガラテヤ3:26-29; エペソ6:9)。

8.神のかたちの回復は、私たちの地上の生涯を通じて進行する、段階を踏んで進むプロセスです。これが聖化です。(2コリント3:18; エペソ4:12-16)。聖霊は福音の力を通してこの回復を成し遂げます(ヨハネ17:17; 1テサロニケ3:13)。

リーダーシップ(ヘッドシップ)

9.神が私たちのうちにご自身のかたちを回復されるにつれて、私たちはイエスのために神が私たちに割り当てられた役割を生きる能力において成長します(エペソ5:21–6:9; コロサイ3:18–4:1; 1ペテロ3:5-7)。

10.聖書は、リーダーシップ(ヘッドシップ)が権威を含むものであると教えています(1コリント11:3,10; コロサイ1:18; 2:10; エペソ1:22; 1テモテ2:11,12)。権威は他者を支配するためではなく、仕えるために用いられるべきです(マタイ20:25-28)。

11.キリストの模範
キリストは、犠牲的な愛(エペソ5:25)、謙遜(ピリピ2:5-8)、そして奉仕(エペソ5:28-29)によってリーダーシップ(ヘッドシップ)を行使されました。すべての信者も、同じ方法で権威を用いるよう求められています(マタイ20:25-28)。

12.男性の責任
教会では、役割関係の原則を適用する際、男性の義務と責任が特に強調されます。神は、クリスチャンの男性が与えられた権威をどのように用いるかに対して責任を負わせておられます。そして、男性がキリストへの愛から権威を行使するとき、神はその行いを祝福されます(1ペテロ3:7; コロサイ3:19)。

13.信者の姿勢
キリストを信じる者たちは、喜んで服従し、尊敬し、従順に、そして愛をもって権威を持つ人々に接し、キリストのリーダーシップ(ヘッドシップ)のもとに生きることが求められます(エペソ5:21–6:9)。

家庭において

14.結婚での役割関係
男性と女性の役割関係は、結婚という親密な結びつきの中で最も完全に表現されます。クリスチャンの家庭では、夫と妻は神の恵み深い救いの賜物を共に受け継ぐパートナーです(エペソ5:22-33; 1ペテロ3:1-7)。

15.夫のリーダーシップ
神は夫を妻のリーダー(ヘッド)として任命されました(エペソ5:23)。夫は神から与えられた妻を愛し、ケアする責任を負います(1ペテロ3:7)。一方で、妻は神によって任命された夫のリーダーシップを喜んで受け入れます(エペソ5:22-24)。

16.霊的な指導の責任
妻と家族のリーダーとして、夫は家族の霊的な指導をする主要な責任を担います(エペソ6:4)。

教会において

17.集会での役割
教会の集会にも役割関係の聖書的原則が適用されます。男性と女性は礼拝、祈り、聖書研究、奉仕の集会に参加します。ただし、女性が沈黙を守るべきこと(1コリント14:34)や、男性を教えるべきではないという聖書の教え(1テモテ2:11-12)に従い、女性が男性に対する権威を行使する形での参加は制限されています。

18.投票や役割の制限
教会の集会では、リーダーシップ(ヘッドシップ)の原則に基づき、男性だけが男性に対する権威を行使する投票を行い、また男性だけがそのような役割を果たします(1コリント11:3-10; 14:33-35; 1テモテ2:11-12)。

19.互いに仕える
すべてのクリスチャン、男性も女性も、神から与えられた賜物を用いて互いに仕えることが求められます(1ペテロ4:10)。女性も、男性に対する権威を伴わない範囲で公的な働きや活動に参加することが奨励されています。

世の中において

20.役割関係の原則を受け入れる
クリスチャンは、世の中での生活や仕事においても聖書的な役割関係の原則を受け入れます(1コリント11:3; エペソ5:6-17)。人生のあらゆる領域で神の御心を行うことが求められるため、この原則を実生活や仕事に適用することを目指します。

21.良心に基づく判断
聖書は、世の中で役割関係の原則をどのように生きるかを多くの場合クリスチャンの良心に委ねています。私たちは、仲間の信者の良心を不必要に縛ることを控え、互いに励まし合いながら、この原則を実生活に適用する方法を探していきます。

22.福音による影響
救われていない世の中は、福音や神の御心に動かされることはありません(1コリント2:14)。そのため、私たちは神の御心を世に押し付けるのではなく(1コリント5:12)、言葉と行いによる福音の証しを通じて世に影響を与え、変化をもたらすことを目指します(マルコ16:15; マタイ5:16)。

私たちが否定するもの

1.行動の例だけに基づく定義
男性と女性の役割の原則を、人間の行動例だけで定義しようとする試みを拒絶します。教義は神の明確な意志から引き出されるべきです。

2.霊的平等と責任の混同
キリストによる霊的平等(ガラテヤ3:28)が、神の律法に基づく特有の責任を無効にするという意見を否定します(1コリント11:3)。

3.ヘッドシップと聖なる状態の相容れなさ
リーダーシップ(ヘッドシップ)と従属の関係が、聖なる状態と矛盾するという意見を否定します(1コリント11:3; 15:28)。

4.男性のみが神のかたちで創造されたという誤解
1コリント11:7が、男性だけが神のかたちで創造されたと教えているという意見を否定します(創世記1:26,27参照)。

5.堕落後の役割の初設定という誤解
創世記3:16の堕落後に初めて役割が設定されたという意見を否定します(創世記2:7,18,22参照)。

6.役割が結婚や教会に限定されるという誤解
男性のリーダーシップ(ヘッドシップ)と女性の従順が結婚や教会にのみ適用されるという意見を否定します(1コリント11:3; 1テモテ2:12)。

7.役割関係が文化的条件に限定されるという誤解
新約聖書で教えられた役割関係の原則が、文化的背景のみに基づくもので、現代には適用されないという意見を否定します。

8.役割が特定の人や時代にのみ適用されるという誤解
役割関係の原則が一部の人々、一部の時代、またはクリスチャン生活の特定の側面にのみ適用されるという意見を否定します。

9.教会内での権威の限定
教会の集会において、神の御言葉に関連する事項だけが権威を持つという意見を否定します。

10.相互服従がヘッドシップを否定するという誤解
聖書が信者に勧める相互の服従(エペソ5:21; マタイ20:25-28)が、男性のリーダーシップ(ヘッドシップ)を無効にするという意見を否定します。

11.「頭」の意味の否定
新約聖書で「頭」とされるキリストや男性のリーダーシップに権威が含まれないという意見を否定します。

12.すべての女性がすべての男性に服従するという誤解
すべての女性が常にすべての男性に服従するという意見を否定します。聖書の他の原則や「神に従うべきです」(使徒5:29)という命令も行動に影響を与えます。

13.文化や条件を無視した適用
習慣や生活条件が変化する可能性を無視した役割関係の適用を否定します(1コリント11:6,16)。

14.沈黙の指示の誤解
「女性は教会では静かにしていなさい」(1コリント14:34)という聖書の指示が、女性によるすべての発言を禁じているという意見を否定します。

私たちはこれらの告白と否定の声明を心に抱きつつ祈ります。どうか神が私たちを聖霊で満たし、神によって与えられた役割と責任を深く理解し、喜んで受け入れることができますように。そして、愛をもって神に仕え、また互いに助け合いながら仕える中で、神の御名を崇め、神の御心にかなうすべての方法でクリスチャンの使命を全うできますように。

ルーテル教会とはカテゴリの最新記事